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業務・ナレッジの属人化の原因と解消する方法【7つのポイント】

January 22, 2023

「あの人がいないと・・」は、大丈夫?

みなさんの会社には会社に欠かせない人材はいますか?会社の創業から社長を支えてきた役員、部署を0から立ち上げた部長、複数の部署を掛け持ちして難しい案件をまとめてきたやり手の課長。。などなど。本人たちは間違いなくスーパー会社員であり、やり手のビジネスマンであることには間違いないのですが、組織としてそれで良いのかどうか課題に思われたことはありませんか?または、親会社や取引先など、会社のパートナー企業から指摘されたことはありませんでしょうか?人事面から見た時に会社を成長させていくには、大きく分けると2種類しか方法がありません。

1.業務を自動化し、人がいなくても回るようにすること

2.社員を増やし組織を大きくしていくこと

「1.業務を自動化し、人がいなくても回るようにすること」については、メーカーであれば工場の自動化や社外への生産委託などの方法があります。もしくは、サービス業の場合であれば、サービスのデジタル化やWebサービスへの以降などで自動化して業務を拡大していく事が可能です。

では、「2.社員を増やし組織を大きくしていくこと」についてはどのような方法があるでしょうか?会社を創業する時、多くの場合創業メンバーは数名から始まります。大きな会社の子会社や、ジョイントベンチャーなどではエース級の人材が投入されますが、人数は多くても2,30人程度である事が一般的です。こうした組織では一人一人が「一騎当千」である事が求められ、各人の裁量も大きくなります。こうした状況の会社ではこちらの方が効率が良いのですが、売上も増え、組織も徐々に大きくなるといかに一騎当千といえども業務量が増えてしまい、無理が生じ、会社の成長にとってボトルネックになってきてしまいます。

こうした状況を打破し、成長していくために必要なのが社員の採用・育成・権限の移譲なのですが、それらを促進させるのに必要なのが業務知識の「形式知」化です。

組織を成長させる時だけではありません。みなさんの会社でも、「この業務は誰々さん」のようにお願いすれば楽ではあるものの、実際どのように業務を行っているかは本人しか把握しておらず、自分の業務も増やしたくないのであえて中身を聞かない、というような事が発生しているケースはないでしょうか?今はそれでも問題ないと思いますが、その人がある日いきなり退職してしまったらどうなるでしょうか?こうした場合にも形式知化は重要です。

今回の記事では、こうした属人化してしまうことの原因とリスクを明らかにし、さらにその解決策まで提示したいと思います。

※スキルの可視化については以下の記事でも詳しく解説しています。

TeamsアプリListsを活用して社員のスキルを管理・可視化する方法

人事データをTeamsで管理・運用する方法

属人化リスクの中心「暗黙知」と、その影響

ここまで簡単に触れてきましたが、業務が属人化していった時に発生する問題の中心にあるのは業務やビジネスナレッジの「暗黙知」化です。暗黙知とは、「経験や勘、直感などに基づく知識」「簡単に言語化できない知識」「言語化しても、その意味すが簡単には伝わらない知識」「個々人が言葉にされていないものとして保持している知識」などと定義され、簡単にいえば特定の個人や小集団が作り出したノウハウです。これ自体は悪いものではなく、ノウハウを作り出すためにはどうしても個々人が一度手の内化して考える事が必要であり、むしろ新しいノウハウを作り出すには必要なステップです。問題なのは個人や小集団しか理解できない、実行できないノウハウになってしまう事です。具体的には以下のような問題が発生します。

1.業務量を増やせない

前述の例ですが、売上拡大のためにもっと業務を増やしたいのだが、特定の業務を実行できるメンバーが一人しかおらず、こなせる業務量も限られるので案件を増やせず売上も増えない、などの状況になり得ます。

2.組織のレジリエンス(柔軟性)が保てない

特定の業務をこなす人がある日突然会社をやめてしまったら、業務全体が回らなくなってしまう。辞めないまでも、長期の病欠や急なお休みなど、本人が会社に来ないだけで業務が回らなくなってしまいます。代わりにできる人がいないという状態です。

3.命令系統の混乱

特定の個人や小集団しか実行できない業務が存在し、その業務が事業にとって特に重要であった場合、その他の部署は小集団の都合に合わせなくてはならず、全体最適な業務改善を行う事ができません。同列の部署の中であればその状態でも許されるかもしれませんが、経営陣がこのような状態になってしまうと、会社にとって合理的な意思決定を下す事ができず、命令系統が混乱します。

大きく分けると以上の3種類となりますが、実際のパターンとしては大小様々な業務で3つの問題が起きてしまい、重層的な課題に発展してしまうケースもあります。

では、なぜ業務・ナレッジが属人化してしまうのでしょうか。ここからは、この問題の原因と、解決策について提示していきます。


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①いままで組織が小さく、形式知にするほどでもない

ここまでで取り上げた内容と同じですが、最もありがちな原因です。会社全体、または事業部など、事業を構成する単位が小さいと自動化、人事育成には目が向かず、今いる人員でなんとかできる範囲で対処しようとしてしまいがちです。そのため、ますます業務の属人化を促進してしまうという現象が見受けられます。

【解消法】

組織が小さく、人数が少ない場合は口頭でのコミュニケーションや、見て学ぶこともできるのでそれほど無理に形式知にする意味はないように思われるかもしれませんが、その前端の準備である暗黙知の共有はしておくべきです。情報の形式地下は以下のような循環で行われます。

注)知識創造企業, 野中郁次郎氏著作より

上記はSECIモデルと呼ばれる情報や知識の共有か、組織ナレッジ化のモデルになります。属人化されている業務はいわば暗黙知の状態であり、SECIモデルの内面化の状態にあります。内面化事態は悪いことではなく、内面化を通じてナレッジを実際の業務に活かし、成果を上げるために必要な作業です。しかし、こうした業務だけですと、個人にナレッジが溜まってしまい、組織的なスキルアップが出来ません。次にやるべきは共同化の作業です。

この段階ではまだ暗黙知の状態ですが、複数人で共有することにより知識が磨かれより洗練されたものになります。人数が少ない、小さい組織では文章にするなど形式知化しなくとも、口頭でのコミュニケーションなどで暗黙知の状態でも情報共有が容易です。本格的な形式知化に向けてまずは共同化を進めましょう。

②組織間の壁が分厚く、情報共有がされない

事業部や専門部署間など、組織が分断されてしまっている場合も業務の属人化が進みます。事例として多い状況ですが、その他の原因と違って属人かの進んでしまう業務領域が限られています。組織の壁をつなぐ連絡窓口業務が特に属人化してしまいがちです。部署を束ねるミドルマネージャーや責任者に連携に関する情報が滞留してしまい、実務を行う周辺メンバーで業務の属人化が進んでしまいます。また、通常のメンバーが部署移動した際に、通常であれば共通業務の部分が多い方がスムーズに次の部署でも仕事ができるはずですが、組織の壁が厚いとそれも進んでおらず、ますます属人化していきます。

【解消法】

みなさんの組織は事業部別組織でしょうか?もしくは職能別組織でしょうか?または、両者を合わせたハイブリット組織かもしれません。いずれの場合も大なり小なり組織の壁ができてしまいがちですが、情報共有の勘所は変わってきますので、まずはご自身の組織形態がどうなっているか、ハイブリットの場合にも事業別か、職能別か、どちらを基本としているかまずは確認して下さい。

◇事業部制の場合

事業部制度では一般に商品やサービスごとに組織が編成され、事業部のなかに職能があるかと思います。従いまして、他の事業部との連携はサービスに関係性がある場合や製品の設計共有などができている場合には比較的実施されていると思いますが、そうでない場合は実務的にコミュニケーションが発生せず、情報共有がされません。

この場合、ナレッジが蓄積できるように、共有の話題がある職能間での情報共有を活性化させることが重要です。職能間での情報共有MTG実施や共通のナレッジマネジメントツールを利用するなど職能組織間での情報共有の仕組みを整えましょう。

◇本部制(職能別組織)の場合

本部性では一般に開発やデザインなど職能毎に組織が編成され、商品やサービス軸のPM(プロジェクトマネージャー)などが横串を通しているケースが多いかと思います。この場合は先ほどの事業部制度とは逆で商品、サービス間での情報共有が行われづらく、場合によってはPM同士が職能リソースを取り合っているケースもあり、対立している可能性もあります。

事業戦略や事業の運営方法についてナレッジが共有されていないケースが考えられますので、経営陣やPM部門が率先して情報発信を行い、まずは対立関係の発生回避(あえて競争しているケースを省きます)その上で商品やサービス同士連携してビジネスを展開できる要素がないかコミュニケーションを取りましょう。実際の業務で連携が深まると、PMや経営陣であっても同じ職能同士ですのでナレッジの共有が進みます。

③社員の勤続年数が短い

社員の勤続年数が短く、新しい社員を常に募集しているような状態ですと、業務知識の継承がおざなりになってしまい、業務知識を持つ社員は給料をあげてでも無理やり維持する結果になります。こうした状態が組織で状態かすると、社員も「業務を属人化させて自分にしかできない仕事を増やすのが昇給の近道」と思ってしまい、ますます属人化を助長します。かといって、そういった社員を引き止めないと、それ以外の社員は頻繁に入れ替わってしまうため会社が回らなくなってしまうジレンマを抱えることになります。

【解消法】

社員の勤続年数が短く、退職していく社員が多い場合、単純に考えると退職数を減らし、勤続年数を増やせばいいと考えがちですが、実際はそう単純ではありません。組織にとって人員の新陳代謝は重要で、ひたすら長くするだけの施策を実施してしまうと成果を上げない人がずっと居座ってしまうということも起こり得ます。こうした状況をさけつつ、必要な人材の退職を抑止するには、人員配置や処遇で個々人や職能、部署毎に差をつけることです。また、個々人のやりたいことと、会社や部門のやりたい方向性を合わせるように努力し、モチベーション(内発的動機付け)を高めることも重要です。

④行きすぎた成果主義

個々人の業績評価が成果主義に偏りすぎてしまうと、個々人が業績を上げるためのノウハウをその他のメンバーから隠蔽し、自分自身が成果を上げることにだけ集中してしまいます。本来であればチーム全体の目標に対して個々人がどれだけ貢献したかで評価するべきですが、同じような事業環境、チームで長く運営していくと評価も徐々に先鋭化し、全体目標の達成よりも個々人の業績評価が重視されがちです。最もまずいのは成果主義と相対評価が合わさってしまった場合で、業務の属人化どころか業務協力ですらなくなってしまいます。

【解消法】

ここでいう成果主義は人事制度のことを主に取り上げます。個々人の業績評価が成果主義に偏りすぎてしまうと、個々人が業績を上げるためのノウハウをその他のメンバーから隠蔽し、自分自身が成果を上げることにだけ集中してしまいます。

こうした行き過ぎた成果主義を抑制するためには個々人の成果を人事評価の中心にするのではなく、組織的な目標への貢献と個人の行動を紐付けた評価にすることです。これを実現するには、組織としてのKPIと、個々人に求める成果や行動を紐づけて定義する必要があります。また、職位によって、組織全体への影響力が違います。例えば部長と一般社員では責任範囲も他社員への影響力も異なりますので、評価全体の中で組織目標への貢献度合いで評価を行う割合は、部長は70%、一般社員は30%程度など傾斜をつけます。

⑤個人主義の蔓延(組織目的の軽視)

先ほどの成果主義と近しい内容ですが、成果主義が会社の組織制度の話であったことに対して、個人主義の方は社員の主義主張であり、それが折り重なった組織がもつ文化のことです。ご想像に難くないと思いますが、個人主義のメンバーが多ければ、自分の業務成果に関係ない他人にノウハウや情報を教えるといった業務は軽視され、目の前の成果を上げる業務だけが重視されます。

【解消法】

先ほどの成果主義と近しい内容ですが、成果主義が会社の組織制度の話であったことに対して、個人主義の方は社員の主義主張であり、それが折り重なった組織がもつ文化のことです。こうした状態を解消していくには、成果主義の修正方法と同じく、個人目標以上に組織目標への貢献を評価する仕組みを整えるのが効果的です。

⑥組織目標の未設定、または周知不十分

業務知識の形式知化、共有は個人目標よりも組織目標を達成するために設定されますので、そもそも組織としての目標が明確にされ、周知されていないと実施されることはありません。実際には、組織目標と個人目標がどのように繋がっているのかを示すKPI・KGIツリーを作成し、どのような行動を起こせば組織全体の目標達成につながるかを、個人のアクションと紐づけて明確にしていきます。

【解消法】

「④行きすぎた成果主義」と「⑤個人主義の蔓延(組織目的の軽視)」の中で組織目標への貢献を評価する重要性について触れましたが、当然ながら組織目標が設定されていない場合はまずは組織目標を設定する必要があります。

また、設定するだけでは不十分で社内に十分に周知する必要があります。社内イントラシステムなどがあれば比較的容易に情報伝達はできますが、個々人が腹落ちして実際の業務に活かせるかというと別問題です。朝礼などの集会で繰り返し話す、ミドルマネージャーも巻き込んで周知徹底させるなど、あの手この手、繰り返し繰り返し、同じ内容を伝える必要があります。

さらに、人事評価との連動も100%できるわけではないため、360度評価を取り入れて、社員を組織目標に貢献できているかを安定するレビュワーにすることでより組織の浸透を果たすことができます。

⑦メンバーの知識、スキル不足

最も単純な原因ですが、課題解決には長い時間のかかる課題です。業務の形式知化はそれ自体がスキルであり、業務をステップで捉えることや、文章にして説明できる必要がありますので、最初から誰でもできることではありません。訓練とある程度の慣れが必要な業務です。教育にも時間がかかってしまいますが、これをやらないと出来ない社員が増え、出来ない事が当たり前になってしまいますので、ますます属人化が進んでしまいます。

【解消法】

最後に、最も単純な原因ですが、課題解決には長い時間のかかる課題です。業務の形式知化はそれ自体がスキルであり、業務をステップで捉えることや、文章にして説明できる必要がありますので、最初から誰でもできることではありません。

ここではSECIモデルの表出化と連結化の作業を行うスキルを主に磨きます。表出化に必要なのが、言語化力と図解力です。業務をステップに表す、人に読んでもらって納得してもらえるレベルの文章を書くなど、暗黙知を会話以外で人に伝えれる状態をまずは目指しましょう。連結化に必要なのはディスカッション能力や構想力、論理構築能力です。具体的な何かがない中で論理を積み上げ、最終的には現場作業に落とし込み、その他の社員が理解して現場で実践できる状態にできる必要があります。才能も必要な業務ですが、ブレインストーミングによるアイデア早出や事業企画などの実務を通じて身につけることができます。

いかがでしたでしょうか?属人化を防ぎ、会社に情報や知識をナレッジとして蓄積することは組織の長期的な成長のために必須のスキルです。今回の記事が、皆様のビジネスに貢献できますと幸いです。

※スキルの可視化については以下の記事でも詳しく解説しています。

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