「活性化した組織」では、従業員一人一人がオーナーシップ(当事者意識)を持ち、組織ビジョンの実現と目標達成のため、チームと協働しながら、主体的かつ自主的に課題や業務に取り組んでいます。そしてその結果、チームパフォーマンスが向上します。組織が活性化していく中で、簡素化や効率化、業績向上やアイデア創出といったような組織にとってのメリットがあるだけではなく、従業員の働きやすさや働きがいも向上します。
このようなことから、「組織活性化」を戦略の1つに掲げる組織が増えていますが、『何から始めていいかわからない』や『施策を打っても期待していたほどの組織活性化には繋がらなかった』という声は珍しくありません。今回は、「組織活性化をうまく進めるための施策・ワークショップ」をご紹介いたします。
組織課題を伺うと、リーダーもメンバーも様々な悩みをお持ちです。
リーダーの意見
・個人の能力は高いが、チームとして協働した成果が出せていない
・言われた業務は上手くこなすが、主体的に動かない
・メンバーから積極的に意見が出てこない
メンバーの意見
・意見を出しづらい
・提案をしても何も改善されない
・他のメンバーが非協力的である
そこで組織活性化を目指すもうまく進められず、以下のようなお声を伺います。
リーダーの悩み
・何から始めていいかわからない
・あれこれ施策を打つが、定着しない・変化が見られない
・施策検討や運用をする中でメンバーのエンゲージメントやコミットメントが低い
メンバーの不満
・組織活性化に対するリーダーのビジョンやメンバーへの期待値が明確でない
・施策が上滑っている
・組織活性化には異論はないが、施策導入することでさらに業務が増えるのではという心配がある
効果的に組織活性化を進めるには4つの抑えるべきポイントがあります。
①目的・ビジョン・目標の浸透
②現状分析・課題設定・施策検討
③実行・推進
④定着度チェックイン・振り返りと次の課題設定
先ほどの組織活性化の悩みを深掘りすると、それぞれのポイントで課題が見えます。
①目的・ビジョン・目標の浸透:ビジョンやゴールが浸透していない。具体的な「活性化している組織の状態」や「そのために期待されるリーダーやメンバーの行動」のイメージが共有できてない。
②現状分析・課題設定・施策検討:現状理解や真の課題把握が表面的で不十分である。優先して取り組むべき課題を選べていない。真の課題解決に影響のあまりない施策を選んでいる。適当な施策を選んだが、導入・定着・継続的向上をするための計画が不十分である。
③実行・推進:従業員の巻き込みが不十分である。
④定着度チェックイン・振り返りと次の課題設定:やりっぱなしで、効果検証を実施していない。
うまくいかなかった理由の中でも、特にポイント②が抑えられていない組織が大半です。
ではどうすれば、上手くそして効率的に②を進められるでしょうか?
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組織活性化のための課題設定と施策検討を行うワークショップでは、4つの抑えるべきポイントのうち①と②を担います。ステップごとにうまく組織活性化を進めるためのヒントをご紹介したいと思います。
〇ステップ1:目的とゴールを明確にする
〇ステップ2:現状を分析する
〇ステップ3:課題を設定する
〇ステップ4:施策を検討する
〇ステップ5:今後の流れを確認する
腹落ち:リーダーは、組織のビジョンと目標を共有します。その上で、組織活性化とは何か、それを活用してどのような組織を目指すのか、また、活性化している組織の状態やそのために期待される従業員の具体的な行動を共有します。いずれの情報も従業員にとって既知であるはずですが、ワークショップを効果的にするにはビジョンや目標の「why」を理解し十分に腹落ちしていることが重要なので、ワークショップ冒頭で目線合わせをしましょう。
もし、これから、組織活性化のビジョンを作ったり、期待される具体的な行動を話し合ったりする段階であれば、このワークショップに移る前に行う必要があります。
〇組織活性度測定:こういった調査は答える側にも質問を準備する側にも大変負担になるので、パルスサーベイや他の組織活性度測定ツールなどをすでに利用していればその結果を活用し、足りない情報のみ追加で収集するようにします。
もし今回の目的に合ったツールがなく、また具体的に文書化された組織活性化度の指標や行動指針がない場合には、新しくアンケートを作成します。この場合は、アンケートには個人とチームとの両方の視点を含めることが望ましいです。例えば、チームでより良い成果が出せるようメンバー一人一人がオーナーシップを持ち主体的かつ自主的に行動できているか、またメンバーがそのような望ましい行動が取れるようチーム全体のさまざまな心理要因が向上しているかをなどが測れるとよいでしょう。
いずれの場合もワークショップ前までに測定を終了しておきます。
〇集計・分析:事前に、アンケート集計と分析を行い見える化します。
〇結果共有と現状深掘り: ワークショップでは結果を共有します。最初に「チーム全体で評価が高いもの(目標と現状に乖離がない・小さいもの)」をレコグニションし、次に「チーム全体または大半で点数が相当低い項目(目標と現状の乖離の大きいもの」を共有します。乖離が大きかったものは、より具体的に問題把握します。必要に応じて、リーダーに一時退席してもらったり、サブチームに分けてグループディスカッションしてもらったりして深掘りに努めましょう。現状分析を丁寧にすることで、本質的な課題が見つけやすくなります。
客観性の担保:表面的・主観的・都合の良い問題整理は、不適当な施策選びにつながりかねません。そこで客観的な問題分析が必要になりますが、組織活性化の検討を組織のメンバーが行うことの難しさがここにあります。誰しも、自分に関係することになると「自己防御」・「自己正当化」が反射的に起きやすくなり、また、組織の力関係が働くと要因が過小評価されたり見逃されたりする可能性があるからです。これらの心理的影響をできるだけ排除し、問題の本質を捉え根本的解決につなげるために、クリティカルシンキングとロジカルシンキングのフレームワークを活用しましょう。前のステップで明らかになった情報をもとに、取り組むべき課題を特定し、課題の優先度を決めます。
こうして優先課題を選んだら、ステップ2の情報や3で整理したことを元に有効な施策候補を考えます。課題ごとにサブチームを作り、幾つかの施策案を検討してもらいます。この際、メンバーが関心のある課題のサブチームに入ってもらうと良いでしょう。サブチームで検討後、全体で共有・協議し、有効な施策を選んで行きます。ここでも表面的な施策にならないよう互いに検証する必要があります。ただし具体的なアクションプラン作りは宿題としてサブチームで持ち帰るようにします。後日、提案・協議・合意がされれば、実行フェーズに移ることになります。
ラップアップ:通常このステップでは今後の流れやアクションアイテムを確認しますが、それに加えワークショップの振り返りをして参加者の目線合わせやコミットメント醸成をはかりましょう。この時点で参加者が「まだ続くのか・・」ではなく、「次がさらに楽しみだ」という気持ちになっている状況を目指します。
ゴールの目線を合わせ、現状理解を深め、適切に課題と施策を選び、またメンバーを早期からしっかりと巻き込むことで組織活性化は加速します。また、今回は触れていませんが、実行後に定着度チェックインや再評価をして、軌道修正や追加のサポートの要否を検討することで、組織活性化の成功確率とスピードがさらに上がります。組織活性化の進め方の参考にしてみていただければと思います。
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