今回の記事では、M&Aによる買収後に陥りやすいナレッジ共有における罠について紹介します。
調査会社のレコフデータによると、2021年の国内企業のM&A件数は4,280件となり、前年比で14.7%増加しました。また、この数字は2019年の4,088件を上回り、過去最多件数を記録しています。
M&Aの主な目的の1つとして、人材の確保や事業ノウハウの継承が挙げられることは周知の事実でしょう。しかし、ナレッジの獲得には多くの困難が伴います。特に、コロナ禍による環境の変化によって、さらに複雑なものとなりました。テレワークが「当たり前」となり、デジタルトランスフォーメーション(DX)が推進される中で、ペーパーレス化などにより社内外のデータが溢れかえっていますが、これにより「どこに欲しい情報があるかわからない」「誰に聞くべきかわからない」といった要望が増えており、ナレッジマネジメントの重要性が浮き彫りになっています。
今回の記事では、近年ますます重要なトピックになっているM&Aとナレッジマネジメントをテーマに、「M&Aによる買収後、ナレッジ共有においてよくある失敗は何か」について紹介していきます。
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M&Aには、権利関係が移転しない資本提携や合弁会社設立などから、権利関係の移転を伴う買収、また複数の法人を統合する合併、一部の事業を承継させる会社分割など様々な種類があります。しかし、本稿ではこれらを簡略化し、M&Aを「1法人または事業が別の法人へと移ること」と定義します。
この定義に基づき、ナレッジマネジメントの側面とも併せ、「新規の法人または事業が自社に移ってきた際に、ドキュメントや人、ノウハウなどを効率的に組み込むには、どのような失敗が起き得るか」を、本稿では考えていきます。
M&Aの目的は多岐に渡りますが、その中でもナレッジの獲得は重要なポイントとなります。しかしながら、M&Aにおいては「想定していた以上に、ナレッジの共有が進まない」といった問題が多々発生します。
まず、ナレッジとは大きく3つに分類することができます。1つは形式知で、ドキュメントやデータなど形のある物として体系化されているナレッジです。例えば、運転免許を取得する際に、教習所で座学として教えられる交通ルールや運転方法などが挙げられます。2つ目は、認知的(精神的)暗黙知です。精神的な側面を持っており、その人が持つ世界観やモノの捉え方などが当てはまります。同様に運転の例を用いると、ドライバーが前方車両の色や大きさ、動きを見たうえで、「なんとなく少し危険だから、距離を空けて運転しよう。」と考えるような場合です。そして3つ目は、技術的(身体的)暗黙知で、特定の人が持つスキルやノウハウのことを指します。運転の例では、ブレーキやアクセルの操縦、駐車の仕方などが挙げられるでしょう。
これら3つのナレッジを法人または事業に当てはめた場合、形式知は体系化されているマニュアルやフォーマット、過去の報告資料などが挙げられます。認知的暗黙知は、その法人または事業に根付く文化や、「打ち合わせでは5分前に集合する方が、印象が良くなる」といった暗黙的な考えなどが、また技術的暗黙知は、長年の事業活動で獲得した個々人に染み付くスキルなどが例となります。
M&Aにおけるナレッジの獲得とは、これらの3つの「知」を上手く融合させ、シナジーを最大化させることに他なりません。ただし、現実的には、多くの障壁が存在します。システム面での統合や、これまでの業務お作法の違いを解消する、などはすぐに思い浮かぶ論点でしょう。本稿では、数ある障壁の中でも特に見落としがちな論点について言及していきます。
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M&Aでは、ナレッジ共有の観点に絞ると、各種ドキュメント(システムも含む)や文化、人の統合に焦点が当たります。まず、ドキュメント類の統合についてですが、両法人または両事業が使用していたシステムやドキュメントを統合し、これらへのアクセスが容易になるよう整備することは必須のプロセスです。しかし、これだけでは本当の意味でのナレッジ共有は完遂されません。ここで、有名な一橋大学名誉教授である野中郁次郎氏のSECIモデルに触れたいと思います。SECIモデルに基づくと、ナレッジ獲得のプロセスは、まず共体験によって暗黙知を獲得(共同化)し、次に得られた暗黙知を共有可能な形式知に変換(表出化)したうえで、これらを組み合わせて新たな形式知を創造(連結化)し、さらにこれらの形式知を個人が実践し体得(内面化)する、一連の流れであると示されています。M&Aでのシステムやドキュメントの統合は、この表出化ないしは連結化を試みる動きですが、これには先に、共体験による暗黙知の獲得が必要なはずです。つまり、背景や前提が全く異なる法人または事業が、いきなり形式知を統合することは本質的ではないということです。しかし、多くのM&Aのケースでは、シナジーを早期に出すべく表出化、連結化のみに取り組み、結果として中途半端な成果に終わってしまいます。
次に、文化面での統合については、各社員の業務効率化を招く恐れ、すなわち、一種のディスシナジーが発生する可能性があります。ほとんどの企業では、通常の業務を行うにあたって、「なんとなく」の空気、風土により円滑性を保っていることが多いはずです。これは決して悪いことではなく、ある程度の暗黙的なルールは組織運営において不可欠な要素です。長年の業務運営の蓄積によって、「心地よい」文化を作っていくことは、むしろ競争力の源泉にもなり得ます。ただし、M&Aにおいては、異なる法人または事業が統合するため、当然、異なる文化がぶつかり合うことになります。これは頭でわかっていても、実際に統合後になると忘れ去られる可能性が非常に高くなります。経営陣は事業戦略の融合やシステム、人事などの統合に気掛かりになってしまうことや、文化の融合による日々のストレスは表層化しにくく個々人の中で閉じられることが主な要因です。一方で、日々の業務において、文化の違いは地道に社員の意識を蝕み、気付くと業務の効率化を阻害しているケースが多々あります。
最後に、特定の従業員に根付いたスキルやノウハウの獲得、すなわちM&Aにおいては社員の統合となりますが、想定以上に人材流出の恐れがある点に留意しておく必要があります。確かに、人材流出リスクはM&Aにおいて重要なポイントとして注視されます。ただし、実際に注視されるのは、統合の前または直後までであることが多々あります。長年勤めてきた会社が買収によって変わってしまうことへの嫌いや、給与および報酬体系の違いなど、これらは経営陣をはじめ非常に注意を払って議論および対策がなされます。しかし、半年後、1年後のような中長期的な観点でも、本当に人材流出面のケアを実行できているでしょうか。上記で言及したような異なる文化面の衝突による日々のストレス増加も中長期的な人材流出の要因の1つです。他にも、優れたスキルを持ち会社一筋だった社員が、新たな環境から入ってきた社員と比べて、自身の給与や評価の低さに気づくことや、逆に他のノウハウに興味が湧き転職を決断してしまう、などのケースが挙げられます。
ここまで紹介してきた通り、M&Aにおいてナレッジ共有を図るには、通常気を配る観点の他、表面的な形式知の融合に留まってしまうこと、業務効率低下を誘発する恐れがあること、さらには人材流出の可能性が想定以上にあること、に留意する必要があります。
これら3つの罠への対応策は、共通しており、M&A前に行われるDD(デューデリジェンス)の段階で、これらのリスクを認識しコスト意識を持っておくことです。DDでは買収がまだ決まっていないため、買い手側はディールが成立すべく社長や株主らを説得できるよう、シナジーを高く見積もりがちですし、売り手側も可能な限り買収額を高めるべく、かつ中でも重要なナレッジに関する情報は秘匿性も高いため、正確な情報を出さない形を取りがちです。特にナレッジの共有には、これまで言及してきた通り、かなりの時間を要することを認識したうえで、DDにおいて適切に評価しておく必要があります。一方で、これらをDDで見積もっておき、また統合後も一貫して意識したうえで、共体験による暗黙知の獲得から着手し、統合後の日々の社員のストレスに気を配り、中長期的にも給与や評価に注視することができれば、より強力で本来目指していたナレッジの獲得、共有が実現できるのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか。M&Aにはナレッジ共有の他にも多くのやるべきことがあります。本稿が皆様のビジネスの一助に成れますと幸いです。
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