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エンジニア組織の「属人化」解消のためプロセスを明文化する方法

October 8, 2023

様々な企業で開発を行っていると、技術の属人化という問題にぶつかることがあると思います。

属人化にはメリットもありますが、圧倒的にリスクが高い状態であるため、各企業でその解消方法が検討されています。

そこで今回は「技術の属人化」の解消に向けて、社内で実施出来る方法をお伝えします。

技術の属人化とは「特定個人しか業務遂行が不可能な状態」

技術の属人化とは、特定個人しか業務遂行が不可能および業務内容を把握できない状態を指します。主に専門スキルを活用する分野や特定ツールを使用する場合によく見られます。

皆さんも「この仕事を頼みたい。でもあの人しか出来ない」という状況に直面したことがありませんか?この状況こそが「技術の属人化」です。

技術の属人化解消のステップ

情報共有の場を設ける

属人化の解消のためにまず大事なのは、情報共有の場を設ける事です。

新技術を習得する担当者がマネージャーであることは少ないため、情報共有を行った上で誰に何を引き継がせるか、どのようなマニュアル、ドキュメントを整備してどのように管理するか、自社の開発にどのように活かすか等を決めてもらう必要があります。

ここできちんと情報共有をしないと、技術のプロセス化や技術取得方法のプロセス化が難しくなります。

その情報共有の際に、下記のような項目を一緒に説明することでマネージャーの理解を得やすく、そこから適任となる新しい人材を追加してくれるでしょう。

・既存技術に比べて何が優れているのか

・どのような技術がベースなのか

・将来的にどのような事業に活用できそうか

・習得までにどれぐらいの時間がかかるか

・習得のベースとなる技術は何か

・次に習得させるべき人物、あるいは部署、チームはどこか

・新しく購入する必要があるものはあるか

 

技術と技術取得方法のプロセス化

JIRAやBitbucketのようなツールを使い、技術と技術取得方法のプロセス化を行うことは、エンジニアにとって非常に重要です。このプロセスを通じて、日々の進捗を管理、共有しやすくすることができます。

後々プロセス化を行う場合でも、日々何につまずいてどのように解決したかを記録していないと、誰かが後で同じことで躓く可能性が高いためです。

この時にメンバーで共通したツールを使用することで、目的や背景を一見しただけで共有しやすく、情報共有の効率化を行うことができます。

ソースコード等の成果物が日々更新され、バグがその場で見つからないものは、JIRAやBitbucketなどのツールを使い、日々の進捗を管理しつつ成果物をサーバー上で遡って確認するようなプロセス化するだけでも属人化は大幅に解消されるでしょう。

ソフトウェアエンジニアは、フロントエンジニア、バックグラウンドエンジニア、組み込みエンジニアなどによらず、自身の描いたコードだけで成果物が完成することは稀です。

基本的には自身のソースコードを、既存のソースコードに反映させたり、別エンジニアが書いたものと合体させたりします。そして統合後のデバッグ作業で、単体では見つからなかったバグが発見されることは良くあることです。

その時に技術の属人化が起きており、追加したソースコードの中身を担当者しか知らないと、担当者不在の時に業務に支障をきたしてしまいます。

そういった時でもJIRAやBitbucketなどで日々の進捗を管理してあれば、バグが起きた個所が、どのような背景でどうしてそのコードになったのかが分かるので、暫定処理や対応方針を決めることができます。

バグが起きても解決までに時間的猶予があれば大丈夫ですが、顧客からのバグ報告や納期まで時間がないとき程問題が起きた時に致命傷となります。そのため、これらのツールを使い後から他人が見ても、その技術や成果物に対するバックグラウンド、目的、技術過程、結果、レビューした人物が分かるようにしておくことで属人化の解消に貢献することが可能となるでしょう。

技術の属人化のメリット・デメリット

技術の属人化にはメリットとデメリットがあります。

メリット

メリットとしては効率的に仕事を進めることができるということです。

同じような業務を何度も行うことで、担当者のスキルや練度が上がり、同じ業務に関する業務時間を短縮することができます。担当者が業務上で得た知識やノウハウは、個人の中に蓄積され、培ったその知識をまた次の経験で活かしていくことで知識はさらに深まり、エンジニアとしての練度が高まります。

そのため急な仕様変更やエラーの改修の時でも、その豊富な経験を元に対応するため早期解決が可能になることもあります。

ただし良くスペシャリストと混同されやすいですが、技術の属人化とは別の状態です。

スペシャリストは特定分野における専門性を持った人物であり、どちらかというと担当者でありアドバイザーのような立ち位置になります。

そのためスペシャリスト以外にも作業者がおり、困った時に頼るというのが、属人化とは別の状態といえます。

デメリット

1つ目は特定の担当者が作業工程、開発にいる場合、その担当者を介した業務を行うときにその人がいないと業務が進まないということです。

日々生活を送るうえで不慮の事故や病気などは避けられず、もしその担当者が不在になってしまった場合、業務の推進がうまくいかず社内だけでなく客先にも影響を及ぼすかもしれません。

2つ目は担当者の違いによって、製品の品質に影響を及ぼす可能性もあります。

そして属人化で一番のデメリットはその状態が蔓延化し、組織の新陳代謝が進まなくなるということです。属人化が起きている時は人手不足の場合も多く、業務難易度が高いものまで属人化していると、その解消に人手を割く余裕がなくなり、そのまま放置されてしまうことがあります。

顧客や社内の別チームから、仕様書や設計書等の資料提出を求められた際に、担当者以外では対応できないことはありませんか?直属の上司やチームメンバーが資料提出を求められて初めて担当者に状況や中身をヒアリングしながら技術の吸い出しとドキュメント化を行っているようなケースは、典型的な属人化が起きている状態です。


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技術の属人化が起きる原因

専門技術が必要

属人化が起きる原因の一つに、その業務の専門性が高いことが挙げられます。

特に今までにない新技術の活用など、新しいものに触れる場合は特に属人化が起きやすいです。

なぜなら、新技術を扱い始めるときにいきなり大人数で扱うことは少ないからです。それは、新技術が自社において有益かどうかの判断が始めは出来ないため、人権費に対するリターンが見合っているかを確認する必要があるためです。そして特定の担当者が技術を取得し、そのまま他の人に広まらないことで属人化が起こります。

専門技術には習得に長い時間が必要になり、新技術はその専門技術の上に成り立っていることがほとんどなので、担当者は専門技術と新技術の間の結びつきや関係性などを紐解きながら習得していきます。

しかし、いざその新技術を広めるときに後から参入した人は、間の結びつきや関係性などを飛ばして、あるいは簡単にしか説明を受けずに新技術の内容を主体で説明を受けることが多いです。

これは時間の問題や、説明内容が複雑になってしまうため仕方のない事ですが、結果的に表面上は理解出来たとしても、いざ何かが起きた時にベースとなる専門技術およびその間の繋がりを把握していないため解決するのが困難となり、結局全てを理解している始めの担当者に課題が集まってしまいます。

そうして同じ担当者に課題解決や仕事が集まってくることで、他の人は新技術から外れていき、属人化が起こります。

業務内容が複雑でプロセス化ができない、プロセス化が面倒

属人化が起きる原因の一つに、業務内容が複雑であるということが挙げられます。

マニュアルを作成して、誰でも使える状態であれば絶対に属人化は起きませんが、マニュアルを作れない程多様なパターンがある。もしくは、マニュアルはあるけれど、逸脱する場合が多い。ということがあります。

前者は対人等ではありますが、技術の現場では少ないので後者について説明します。

マニュアルはあるが逸脱するパターンに多いのは、マニュアルが古い場合と、「一回限りの変更であって残すほどではない」と担当者が考えてしまう場合です。

更新する必要がないほど完璧なマニュアルを初めから作ることはほぼ不可能です。

エンジニアは日々の技術進歩に対応していくだけではなく、社会のルールや国際法等によって、仕様を変えなくてはいけません。

そのため常に改変し続ける必要がありますが、一度決まったプロセスを改修しようとすると、改修方法の正当性や危険性などを調べて上司に報告し承認をもらうなどの追加プロセスが必要になり、その手間を面倒くさがってプロセス化しないというのも良くある状態です。

マニュアルを逸脱する時というのは顧客対応している場合が多く、顧客対応で時間を取られているので、マニュアルの改修に時間をかけることが出来ないのです。

担当者以外の時間が足りない

中小企業などに多いですが、エンジニアがエンジニア職だけでなくマネジメントを行っていたり、部長などのマネージャー層が現場作業を行うような人数が足りていない場合、新技術を担当者以外の人が習熟する時間が足りないことが多いです。

新技術の全体を理解することは、一朝一夕では出来ないため多くの時間がかかりますが、その時間を取れないために、技術を活用できる範囲が制限されてしまい属人化が進んでしまうのです。

高齢化

人間は歳を重ねる毎に新しい事を受け入れにくくなると言われ、若い世代と比較して新しい技術を習得するための抵抗感が強く、変化に適応しにくい傾向があります。

もちろん生涯現役のエンジニアのように、常に現場で新しい事を吸収し続ける人もいます。

しかし、大半の人は老化と共に記憶力も低下し、新しいことを多少なりとも拒むようになります。

そうすると新しい技術を担当者がきちんと解説したとしても表面上しか理解せずに、「詳細は担当者に任せる」というように、技術の拡散が行われず属人化が進みます。

残念ながら社会的に高齢化が進み、これからより若い世代が減っていきます。

その中でも技術の進歩は変わらず進み続けますが、それを柔軟に受け入れる人物を教育することも課題の一つと言えるでしょう。


技術の属人化は、様々な企業において起こりうる問題です。

そして技術の属人化を解消するためには、マネージャー含めたチーム全体の協力と努力が必要です。メンバーが協力し、コミュニケーションや情報共有とプロセス化の推進、新技術を共に学ぶ文化を築くことで、より効率的な業務遂行が可能となり、属人化による業務リスクを減らすことができるでしょう。


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