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インシデントをすぐに発見、報告させるためのルールづくり、マネジメントのコツ

October 23, 2022

危険を回避!問題発生の法則

みなさんはハインリッヒの法則を聞いたことはありますか?1:29:300の法則と言われたりもします。こういうお話を会社で聞いたことがあるかもしれません。

「1件の重大事故が起こる手前には29の軽微な事故があり、またその背景には300もの“事故の素”ともいえる小さな異常やケアレスミスがある」

工事現場や工場などミスが人命に関わる現場に関わったことのある方は一度は聞いたことがあると思います。朝礼や最初の研修などで聞いた時は「ふーん」程度のものかもしれませんが、実際に身近で事故があるとそうもいっていられなくなると思います。特にマネージャーの方は事故を起こした責任も問われますし、再発防止策も考える必要があります。もちろん、業務プロセスや設備投資によって、誰がどのような作業をしようともこうした事故が起らない方が良いのですが、実際には全てを防ぎ切るのは不可能です。

オフィスワークでも問題発生の回避は重要です。お客様対応で問題が発生すると会社全体の信用にかかわります。また、経理部門や法務などミスが発生してしまうと重大な問題に発展してしまう部署もおおくあります。工場などと異なり、人命に関わるわけではありませんが、損害金額はおおきなものになりがちです。オフィスワークでも油断せずにインシデント管理をする必要があります。

※Teamsを活用したインシデント管理・運用については以下の記事でも詳しく解説しています。

TeamsアプリListsで「インシデント管理」を効率的に行う方法

インシデント発見報告のツール作り

インシデントを早期に発見するためには、バッドニュースファーストの組織行動を徹底する必要があります。しかし、実際には悪いニュースが発生すると通常業務が滞ってしまうので、報告を敬遠しがちです。また、自分で起こしてしまった場合にはどうしても自分で対処して問題自体をなかったことにしてしまいがちです。こうした事を防ぐために、インシデント発生時には迷いなく報告できるためのルール作りが欠かせません。特に以下の三点を整備しましょう。

①報告すべき状況の設定とインシデントの定義
②報告フローと責任者
③報告時の情報の標準化とツールの導入

順番に詳しくみていきましょう。

①報告すべき状況の設定とインシデントの定義

まずはどのような場合に報告すべきなのか、状況を設定しましょう。報告するべき状況を設定する事で、インシデントの発見を促すことができます。

ここでは具体例を上げながらご説明していきます。当事者は一般社員と想定し、上司や他の部署に報告する場合を想定します。状況の設定と合わせてインシデントの定義も明確にする必要がありますので、合わせて明確にしましょう。

上司など同職種、部門内部で対処するべきインシデントの場合

どこまで現場で対応するべきなのか、業務上の対応範囲を設定します。一般的には社内業務フローを設定し、通常業務を現場に任せることになると思いますが、業務フローを定義する際に全ての業務を事前に想定することは難しいです。例として、顧客対応のフローをイメージしてください。小売店のレジなど想定しやすい業務もありますが、商品に関するトラブルやレジのシステムエラーなど現場で対処が難しい業務も発生する可能性がある事が想像できるかと思います。こうしたイレギュラーな業務は基本的に現場対応が難しいため、報告の対象となります。

他部署を巻き込む必要のあるインシデントの場合

他部署への報告は、自身の部門とは逆に、報告する内容を定義しておきます。そもそも他部署への依頼という事で自部門では対応できない業務という事です。そのため、なんでもフリーフォーマットで報告してしまうと受け側の部署の業務が煩雑になってしまい、業務量が非常に増えてしまいます。報告時に書くべき内容については後述しますが、報告するケースを事前に定義、例外のケースも徐々にどのように報告すべきか定義して決めていく事が重要です。次部門から他部門へとインシデントを報告する際にはもちろんですが、他部門から次部門へのインシデントを報告される場合にも事前に定義して他部門に周知しておくことをお勧めします。

報告するべきインシデントの設定

インシデントと一言でいってもその種類は様々ですが、報告するべき場合は以下の二点が重要です。

①インシデントの深刻度(問題の影響範囲)
②インシデントの緊急度(課題の対処に必要な時間)

一般的に、①重要度が高く、②緊急性も高い場合は最優先で報告する必要があります。逆に両方とも低い場合は報告する際にもそれほど急ぐ必要はありません。①か②のいずれかが高い場合は業務内容に応じて優先順位を決めて良いわけですが、一般に課題の深刻度が大きいものをより優先します。業務課題は一つの課題が他の課題を引き起こしているケースもあり、複数の課題が同時に発生した場合、より大きな課題の派生課題であるケースがあるからです。現場ではこうした課題の因果関係を紐解くまでは難しいと思いますので、①、②がそれぞれどの程度か現場の判断を含めて報告するように定義しましょう。

②報告フローと責任者

どのような場合に報告するかを決めたあとは、報告するフローを定義します。報告フローはあまり細かく決めすぎずに、どの部署のどの役職者に報告し、実務は誰が対応するか程度の決め事にすることをお勧めします。報告はその性質上例外的な業務として発生しますので、あまり細かく決めすぎると帰って柔軟に対応する事が難しくなってしまいます。また、より重要なのはインシデントが解決するまでに誰が責任を持って対応するかという点です。インシデントの重要度にもよりますが、解決が難しい可能性が高いため、しっかり解決するまで遂行する必要があります。また、報告しても解決されないという実績が蓄積してしまうと、「上司に頼んでも無駄」「報告する意味はない」という悪き習慣が生まれてしまい、それ以降報告するというモチベーションがなくなってしまいます。報告を確実に実行させるためにも、責任者をしっかりと決めて、フローと合わせて合意しましょう。

解決までの責任を追った人は、それ以降インシデントの発見がしやすくなりますので、継続的にインシデントの発生を防ぐ意味でも重要です。

③報告時の情報の標準化とツールの導入

報告時にどのような内容で報告するべきか迷わないように、インシデント報告フォーマットを決めておきましょう。業務内容によって書くべき内容は異なりますが、基本的には以下のような内容を記載します。

①対象業務(業務フロー上の名称)
②発生したインシデントの概要
③影響範囲
④対応期限
⑤背景
⑥発生理由
⑦期待する対応策

以下は顧客問い合わせ内容の報告の具体例となります。特にしっかり記載するべきは、⑤背景と⑥発生理由となります。ここを正確に伝える事で、対応する部署や上司も状況を正確に把握し、対応もスムーズになります。可能な限り具体的、かつ網羅的に事実を記載しましょう。

合わせてチケット管理システムなどインシデント管理ができるツールの導入も検討すると、大規模な組織でインシデント管理を標準化するには有効です。ツール上では報告の際のテンプレートやフォームを準備できますので、業務効率化の意味でもぜひ検討しましょう。

報告内容例(顧客対応の場合)

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①対象業務(業務フロー上の名称)

昨年発売したカーナビのお客様問い合わせ対応

②発生した課題の概要

カーナビがご購入後数日で利用不能になっており、お客様からお叱りの問い合わせあり。

返品と料金返却をご希望。

③影響範囲

カスタマーセンター、品質部門、販売部門

④対応期限

◯月◯日

⑤背景

昨年発売した型落ちのカーナビを購入したところ、数日で電源が入らなくなった。販売店で店頭サンプルとなっており、かなり安く売られていたので購入。サンプル品のため製品保証がないことは理解していたが、数日で使えなくなるのはおかしいとお客様からお叱り。

⑥発生理由

店頭デモンストレーション品であったため、本格的な製造前に事前製造した品質が十分でないもの、かつ店頭でサンプルとして利用され続けたものを購入され多様だが、サンプル品は本来小売店に販売しないように依頼していたはずであり、小売店も説明の上で販売したようだがトラブルに繋がっている。

⑦期待する対応策

お客様には弊社のスタンスを説明ずみだが、お怒り収まらず。改めて謝罪すると共に、返品ではなく新品をお送りして弊社の顧客になっていただけるように促す。また、再発防止策を社内で徹底し、小売店に対してより厳格にルールを適応できるように販売部門で検討してほしい。

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インシデント発見・報告をスムーズに行うためのマネジメントのコツ

インシデントマネジメントのコツは一言で言えば心理的安全性を担保することです。心理的安全性とは「組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のこと」です。インシデント、特に自分のミスによって発生してしまったインシデントを報告するのは勇気が入ります。自分でなくとも、一緒に仕事をしている先輩や上司など、場合によっては逆恨みされて厄介な状況になることも仕事ではしばしば起こりうることです。こうした「厄介ごと」をおこさないために、インシデントの発見・報告を歓迎し、組織的にインシデントの発生確率を下げていく必要があります。以下に挙げる代表的な問題に対処し、インシデントを発見・報告をする組織文化を作りましょう。

1.報告すると自分の(または上司の)評価が下がらないか心配

人事評価に悪影響が出るのではないかと心配してしまうケースです。見かけ上、自分で対応できなくて上司や他の部署にいらいするというふうにも見えてしまうため、当事者としては自分の評価を気にしてしまうことがあります。対応方法としては、インシデント報告は業務上認められた正式なフローであり、正しくエスカレーションする事は評価にマイナスどころかプラスであることを周知徹底しましょう。

2.報告を後回しにしてしまう、できれば発見されないと願ってしまう

取り扱うべき課題は、場合によっては当事者のミスで発生することもあります。そうした場合、人情として隠したくなってしまい、報告が遅れてしまうこともしばしば起こり得ることです。しかしながら、組織としては個々人がミスをする事は許容して業務を行うべきであり、個々人はBad News First(悪いニュースほど早く報告)の習慣を現場にも持ってもらう事が重要です。個々人のミスでも組織として対応するべきである事を周知徹底しましょう。

3.対応先の部署と仲が悪い(または)、頼みたくなかった

縦割りの部署で特に発生する事ですが、エスカレーション先の部署と仲が悪い、または交流がなく、報告しづらい雰囲気を作ってしまっているケースです。特に、組織設計上対立関係にあることを宿命づけられる部門の場合(営業と開発など)どうしても対立しがちですが、インシデントが発生するのはある意味緊急事態ですので、協力して対応できるようにしっかり業務フローを作りましょう。その際、責任者は両部門のトップ、もしくは両部門を統括する役職者を設定するのがお勧めです。

いかがでしたでしょうか?インシデントマネジメントは長期的に会社の組織を強くする有効な方法です。しっかり対策して組織的な対応体制を整えましょう。本稿が皆様の業務効率化に役立てますと幸いです。

※Teamsを活用したインシデント管理・運用については以下の記事でも詳しく解説しています。

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